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2010-02-20

『赤の女王の名の下に』

汀(←みぎわ)こるもの、という作家さんの、THANATOSシリーズ最新作『赤の女王の名の下に』をやっと読み終わりました。

最近はもっぱら、お風呂の友でした。

THANATOSシリーズとは、それぞれ「死神」「悪魔」と呼ばれる美少年双子を主役にしたミステリのシリーズです。

前作で、情報漏洩と少年犯射殺の責任を問われて左遷された警察官僚・湊が、今作では、エリートコース復帰を目論んで訪れた財閥一族の洋館で殺人事件に遭遇する。
捜査か、隠蔽か。
大人の事情で、事件はあらぬ方向に処理されるが…。
というストーリー。

毎回主題にそった魚を出してくる汀こるものですが、今回は、メキシコの暗黒の洞窟に生きる目のない魚、ブラインドケーブカラシンです。

ルイス・キャロルが書いた物語の中、鏡の国で赤の女王とアリスは、移りゆく背景に追い立てられ、「どこかに行くために」ではなく、「ここに居続けるために」走らなければならない。

“赤の女王のレース”とは、生き延びるために永遠に走りつづけなければならない、進化のレースのこと。
人類も含め、全ての生物は必死に進化しつづけなければこの世界から取り残され、滅びてしまう。

“利己的遺伝子”(The Selfish Gene)を提唱したリチャード・ドーキンスが“盲目の時計職人”(The Blind Watchmaker)と名づけた進化のシステムの、一つの側面はタナトス=外なる死。

過酷な“赤の女王のレース”の末には、“よくできた”者しか生き残らない。
環境に適応できなかった生物は死ぬしかない。

ブラインドケーブカラシンにおいては、ある日、洞窟の中で、突然変異があって視力のない個体が生まれた。
光ある世界ではハンディキャップとなる目の有無が、暗い洞窟の中では生存を左右しない。
盲目でも生き延びて仔を持った。
そして、盲目の遺伝子が洞窟内に広がった。

ここまでは、タナトスが支配する側面。

しかし、なぜ、洞窟内の全ての魚が両目をなくしたのか。
なぜ、目のある魚が生き残れなかったのか。

それは、進化のもう一つの側面。
遺伝子に組み込まれた自己愛。エロス。
生物は自分自身に潜在する要素に魅かれる。

目のない魚から生まれた仔は、自分に目があろうとなかろうと、親に似た目のない魚を好む。
そうして洞窟内の全ての魚が目を失った。

死とは、外なる理由による淘汰、そして内なる自己愛の欠如。
愛された者しか生き残ることはできない。
それにはまず自分自身を愛する必要がある。
ブラインドケーブカラシンが異形の姿で生きているのは、自分自身が、そして同種の誰かがそれを愛したから。
自らを愛せないものは、この世を生き抜くことはできない。

ブラインドケーブカラシンを通して進化のシステムが語られ、殺人事件のほうもエロスとタナトスによって謎解きがされます。

汀こるものは、生物に関する知識と、キャラクター造形が秀逸。

あいかわらず、あざとく、かつドライに事件は起こり、解決されます。

ミステリというジャンルにいながら、ミステリであることはストーリーの一要素にすぎない。

この本を通じて、ブラインドケーブカラシンという魚を知ることができて、とても良かった。
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